ひと昔前までは、安くても30万円はしていたパワーメーター。
非常に高価だったんですが、今はかなり安くなってきて、まだ手が届く範囲の金額になってきた。
例えば、左クランク計測のStagesPowerのものでよければ7万円程度で手に入りますし、ブルートゥース対応のパワーメーターならスマートフォンアプリでパワーを表示できるので高価なサイコンも購入しなくていい。
安くなって買いやすくなった今パワーメーターが必要なのか。考えてみたいと思います。
速くなりたいのならパワーメーターは必須
特にレースに出ている人や、ヒルクライムTT(タイムトライアル)などをしている人にとって、パワーメーターは必須だと思う。
雑誌や自転車本にのっているように、ロードバイクはある程度の域を超えると(結構早い段階で)「距離を乗り込んでも強くならない」というのは常識になっていますよね?
以前は心拍計をつけて心拍数を計り、トレーニング強度を管理していました。
実際、心拍計でもトレーニングの強度を管理はできるんですが、実際出している強度が心拍数に現れるまでにタイムラグがあるんですよね。
長いと10分ほどのタイムラグになるので、決まった時間を狙った強度でペダリングし続けるのが難しいのです。
例えば、平日は1日に1時間しかトレーニング時間が取れない人にとっては、前後10分ずつのアップとダウンがあると考えると実際にトレーニングできるのは40分間。
その40分を1分足りとも無駄にしないためには、心拍計では強度が弱すぎたり強すぎたりを調整する時間が無駄になってしまうんですよね。
特にホビーレーサーにとっては、トレーニングの時間効率を上げる革命的なトレーニングツールだと思いますよ。
パワーメーターはトレーニング時間を確保しやすいプロより、トレーニング時間に限りがあるホビーレーサーの方が、メリットが多いように思います。
なぜならパワーメーターは心拍計と違ってインターバルが始まったその瞬間に狙った強度にできるからです。
パワーメーターでできて心拍計ではできないトレーニング
パワーメーターのいいところは、パワーを出した瞬間にそのパワーが見れるところです。
心拍計だと先ほども言ったように、狙った強度をその瞬間に正確に出すことは難しいのですが、パワーメーターだとそれができる。
例えばFTPという(心拍レベルではレベル4cに当たる)強度で踏むトレーニングをしようと思った場合、パワーメーターではペダルを踏み始めて5秒以内にその強度で正確にペダリングができますが、心拍計は心拍数があがるまで待つ必要があります。
まぁある程度はこのぐらいの強さで回せば、LT走になるというのはわかるとは思うのですが、その日の調子などもあるので正確ではないでしょう。5分経って十分に心拍数が上がるまでトレーニング強度の正確性が判断できないのです。
実際にパワーメーターにはできて心拍計にできないこともあって
- 長時間のインターバル開始直後の強度調整
- 5分以内の短時間のインターバル
- 長時間のインターバルで後半もパワーを維持する
ということが心拍計にできないことです。
長時間のインターバル開始直後の強度調整
トレーニングの後半がキツ過ぎて最後までできないっていう経験はありませんか?
ここまでもなんども言っているように、トレーニング開始直後は心拍計では強度の調整が難しいのです。
もちろん「楽をできてしまう」というのも問題なのですが、、それ以上に「インターバルの前半で追い込みすぎてトレーニングを完了できない」ことの方が問題です。
強くなりたい速くなりたいと思っている人は、頑張りすぎるので心拍計だと必要以上に前半で追い込みすぎる傾向があります。前半に頑張りすぎると後半がだれてしまって、狙ったトレーニングができないんですよ。
自転車のトレーニングは辛ければいいのではなく、「狙った強度をで狙った時間だけ維持する」ことが重要です。
最初に追い込みすぎないことは、正しくトレーニングをすることにつながります。ということは、速くなれるということですね。
5分以内の短時間のインターバル
これも心拍数が上がるまでのタイムラグのせいなのですが、心拍計では5分以内のトレーニングの強度の調整はできません。
なぜなら高強度のトレーニングをしている強度に心拍数が上がるまでに5分程度かかる場合があるからです。
1分以内のトレーニングではパワーメーターは一切役に立ちませんし、5分のインターバルでは終わる頃に強度を上げすぎ(もしくは下げすぎ)がわかることになってしまいます。
実際に心拍計からパワーメーターに切り替えて、無酸素運動領域のトレーニングをした場合には、最初から最後までちゃんとパワーを出し続けないとすぐに数値に現れるのでかなりきついのです笑
だからパワーメーターを使うと時間効率はかなりよくなりますね。
長時間のインターバルで後半もパワーを維持する
心拍数を使って長時間のインターバルをしているとだんだん疲れてきますよね?
もしかして、後半はペダリングの強度が落ちていませんか?
インターバルの後半では疲れてくると多少パワーを落としても心拍数は維持できてしまうんです。
だから心拍計で管理をしていても後半疲れてしまっていて、実際にトレーニングに必要な強度でペダルを踏めていない可能性があるんです。
その後半のごまかしはパワーメーターではできません。冷酷なほどにパワーメーターはあなたのペダリングパワーを表示し続けるのです笑
もう心拍計のころとは全然違います。後半疲れが出てくるところでも同じパワーで最後まで踏み続けるインターバルトレーニングと、心拍数は維持してパワーは落ちて行っているトレーニングはどっちが速くなりそうですか?
どう考えても前者ですよね。
あなたが疲れてきても、レースのペースは落ちませんよね?だからレースでは疲れてきてもパワーを落とすわけにはいかないんですよ。
だから同じ強度のトレーニングをしているように思えて、パワーメーターのトレーニングと心拍計のトレーニングでは、全く強度が異なるんです。
これが速くなるためにパワーメーターが必須である理由です。
昔の人は使ってなかったじゃないかって思います?
そう。数年前までは心拍計トレーニングが一般的でパワーメーターを使ってトレーニングしている人は少なかったと思います。
でも今はレースで勝とうと思う人の半分以上が使っているのではないでしょうか?
その中で心拍計を使い続けるあなたは、レース会場で最初からハンデを背負っているようなものなのです。
レース中のパワーメーターの活用方法
パワーメーターがあれば、レース中も有利になることがあります。
それはペーシングができるということ。
例えば、レース中に山岳が出てくるとしましょう。基本的には集団についていくのが定石ですが、あまりにハイペースすぎて登りの途中で、ちぎれてしまってもう二度と集団に戻れなくなってしまったという経験はありませんか?
パワーメーターがあれば、その坂も自分にとってギリギリ限界のタイムで登ることが可能です。
というのもパワーメーターでデータを貯めていると、どの時間であればどのくらいのパワーで踏み続けることができるかというデータがわかるのです。
言い換えれば、パワーメーターがあればその坂は自分のギリギリのペースで登り切って、下りで追いつくという選択もできます。
逃げの場合にも役立つ
逃げをして優勝を狙っている場合、集団との秒差で管理すると思いますが、頑張りすぎて足がなくなる可能性がありますよね?
パワーメーターであれば、そのくらいのパワーであればゴールまで持続可能かも、わかりますし、最後の数百mでさらに踏んでもばてないパワーもわかります。
さらに数人での逃げの場合は、明らかにペースが早すぎる場合もあるでしょう。そのままのペースでいけば間違いなくその逃げ集団はバテて吸収されてしまいます。
そういう場合に自分はこのペースで無理だと思うから、着き位置に徹したり集団に戻るという選択もできるでしょう。
パワーメーターはレース展開さえも左右するのです。
ポタリングやロングライドにパワーメーターは必要ない
ここまで説明の通り、パワーメーターはレースで勝つためのツールです。
ロングライドやポタリングがメインの人には必要のないツールでしょうね。もちろんお金が余っているのなら、今日◯Wもでてた!やった!と楽しむツールとして持つのもいいのですが、ちょっとお金がもったいない気もします笑
レースに勝つにはパワーメーターは手に入れるべき
ここまで書いたように、速くなろうと思えばパワーメーターは必要なトレーニングツールだと思います。
もちろん心拍計だけでも強くなれるでしょう。ただし心拍計でのトレーニングはペーシングスキル(そのトレーニングの強度を出すペース配分)が上達する必要があります。
そうでなければトレーニングの最初から正しい強度にすることができないですし、人間は弱い動物なので辛くなると力を弱めてしまいます。パワーを少し弱めたぐらいでは心拍数は下がらないので、弱めたことに気がつかないのですが、パワーメーターは常に冷酷に真実を伝えてくれます。
なので辛いトレーニングにはなりますが、強くなれるはず。
速くなるためにパワーメーターは必要ですよ!